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ビジネス(女性)

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少なからぬ有能な女性が、成
功できたのはただの好運だと言う。ど
れだけ世間に認められても、まだまだ
努力が足りないと感じている。失敗へ
の不安とは違う。失敗が怖いのは誰で
も同じで、男であれ女であれ、うまく
いかないかもしれないという不安は常
に抱えている。これらの女性たちに特
徴的なのは、努力して手にした自らの
成功を本物ではないと感じていること
だ。自分の業績は偽物にすぎない、今
の地位につけたのは運が良かったか、
誰かが重大な間違いを犯したせいだ、
と考えるこれらの女性たちは「インポ
スター症候群[Imposterは「詐欺師」
「ペテン師」「なりすました人」とい
う意味」]と呼ばれている。新しい職
務に就いてから数週間はともかく、そ
の後もずっと自分は医師やエンジニア
や重役の役割を演じているにすぎない
という思いがつきまとい、やがて化け
の皮がはがれないように必死に仕事に
打ち込むようになる。
スーザン・ピンカー『なぜ女は昇進
を拒むのか』
(2008)p.273-4
「成功恐怖」女性がトップの
位置に登りつめつつある、まさにその
ときに心の中から響く声があります。
「本当にいいの、そんな高い所に昇っ
て。そこまで行ってしまったら、男の
人はみんな私より下になってしまうの
よ。そうしたら、誰も私と結婚なんか
してくれない。引き返すなら今よ。も
う十分成功したじゃない。もっと大事
なことがあるでしょう? そう、愛よ。
結婚よ。暖かい家庭を築くチャンスを
失ってしまうかもしれないのよ。降り
るのよ。そこから降りなさい。早く!」
こういう、無意識の中から立ち昇って
くる感情を、心理学では「成功恐怖」
(fear of success)と言います。マ
ティナ・ホーナーという女性の学者が
「発見」しました。こういう恐怖に駆
られると、女性は成功を避けるように
行動します。せっかく入社した一流企
業で一人選ばれて昇進したりしたその
時に辞表を出すとか、女優の場合も大
ヒットした直後に不釣合いな相手と結
婚して銀幕を去ったりすることがしば
しばあります。---私は去年、こうい
う知らせを受けました。私がかつて名
付け親になった女の子が、東大と慶應
を受験し、両方に合格しました。親と
先生は東大に行けとすすめたのに、本
人は入学手続きの前の晩まで泣いて抵
抗し、結局慶應を選んだと。彼女にと
って「東大」に入学することがすでに
「成功」なのです。だから彼女は降り
たのです。実際、東大に進学すると、
女子学生は在学中に結婚相手を見つけ
ねばなりません。社会に出ると、自分
が東大卒だと聞いた途端、男の人はひ
くからです。医学部でも、女子学生は
同じ理由で在学中に結婚相手を見つけ
ようとします。「東大」「医学部」「
芸能界」、私はこの三つの世界が、一
番女性の「成功恐怖」の表れる場所だ
と考えます。「当事者」でないと分か
らない恐怖というものがあるのです。
小倉千加子
『結婚の条件』(2003)p.174,175
男性の迷妄が深いところは、地
位とか収入とかいう自分の社会的パワ
ーが自分の核なのであり、「自分=ポ
ストとお金」と考えて忸怩たるところ
が全くないところである。男性が支配
層にそう思わされていることは、既に
「男性学」で明らかにされているのに
、自分がそうだと気づくことができな
い。気がついた瞬間、負け犬どころか
落伍者になる恐怖があるからである。
小倉千加子『結婚の才能』(2010)p.43
マンスプレイニング(英語:Man
splaining)は、男を意味する「man
」(マン)と解説を意味する「explai
n」(エクスプレイン)をかけ合わせた
かばん語。一般的には「男性が、女性
を見下すあるいは偉そうな感じで何か
を解説すること」とされる。
Wikipediaより
徹底して無知でありながら、完
璧で挑戦的なまでの自信に満ちた態度
というのは、私の経験では、特定のジ
ェンダーと結びついている。男たちは
私に、そして他の女たちに、説教した
がる。自分が何を言っているのかよく
わかっていなくても。そういう男は存
在する。女性なら覚えがあるだろう。
どんな分野でも、ある先入観のせいで
物事がうまく運ばないことがある。ど
んなに頑張っても、話すことも、自分
の言うことを聞いてもらおうとするこ
とも、ままならない。ストリートで起
きるハラスメントと同じように、ここ
は女の居場所ではないと教えることで
、若い女性たちの意思を打ち砕き、沈
黙に落とし入れる、あの先入観。私た
ちは自分を疑うようになり、自己の限
界を思い知らされ、一方で、男たちの
根拠のない自信過剰を助長する。
レベッカ・ソルニット
『説教したがる男たち』(2015)p.10-1
成年の女に月経は自然の現象では
あるけれども、現代の労働の或る種の
ものは、その自然現象に阻害を与える
ような悪事情で女を働らかせている。
宮本百合子
『職業婦人に生理休暇を!』(1937)
コロンビア大学ビジネススク
ールのフランク・フリン教授とニュー
ヨーク大学のキャメロン・アンダーソ
ン教授が、職場における男性像、女性
像を確かめる実験を2003年に行った
。ハーバード・ビジネススクールのケ
ーススタディから、実在する女性起業
家ハイディ・ロイゼンのケースを取り
上げ、学生に読ませたのである。ケー
スではハイディ・ロイゼンがベンチャ
ー・キャピタリストとしてどうやって
成功したかが説明されており、「強烈
な個性の持ち主で……ハイテク分
野の著名な経営者にも顔が広かった。
こうした幅広い人脈を活用して成功し
た」とある。実験では学生を二つのグ
ループに分け、第一グループにはこの
ケースをそのまま読ませ、第二グルー
プには主役の名前だけを変えて読ませ
た。ハイディという女性名から、ハワ
ードという男性名に。そしてフリンと
アンダーソンは、学生たちがハイディ
とハワードから受けた印象を調べた。
能力面では学生たちは両者を同等に評
価した。当然である。ストーリーはま
ったく同じなのだから。ところが学生
たちは、ハイディとハワードの能力に
対して同じように敬意を払ったにもか
かわらず、ハワードのほうを好ましい
同僚とみなしたのである。ハイディの
ほうは自己主張が激しく自分勝手で「
一緒に働きたくない」「自分が経営者
だったら採用しない」人物とみなされ
た。情報はそっくり同じで、ちがうの
は性別だけである。それなのに、これ
ほどちがう印象が生まれたのだった。
この実験は、さまざまな研究がすでに
示していたことを明確に裏付けたと言
える。つまり、成功と好感度は男性の
場合には正比例し、女性の場合には反
比例するということだ。成功した男は
男からも女からも好かれるが、成功し
た女は男からも女からもあまり好かれ
ない。
シェリル・サンドバーグ
『LEAN IN』(2013)p.57-8
みなさん、どうもこんにちは、
丸山成美です。24歳の派遣社員です。
なーんつってね。実はこれは仮の姿で
、本当のわたくしは、ダルダル星人の
ダル山ダル美、ダルちゃんです。
知ってます? ダルダル星人。知らない
よなぁ、そうだよね。まぁもちろんそ
の辺にはいませんから。いやいるんだ
けど、ちゃんと擬態してますから。
はるな檸檬『ダルちゃん1』(2018)p.5-6
娘からみた母親
4歳「ママってなんでもできるのね!」
8歳「ママはたくさん知ってる!
すごくたくさん!」
12歳「お母さんて、なんでも
知ってるわけじゃないのね」
14歳「もちろん、お母さん
にだってわからないわよ」
16歳「お母さん? どうし
ようもなく遅れてるわ」
18歳「あのおばさん?
ずれまくってるわね」
25歳「そうね、彼女にも
少しはわかるんじゃない?」
35歳「決める前に、ママの
意見も聞きましょうよ」
45歳「ママなら、どう
言ったかしら」
65歳「ママと話せたらいいのに」
出典不明
ジョージー・ヴォーゲル『女の子はい
つも秘密語でしゃべってる』
(2002)p.58
日本の社会は男性中心主義で、
女性は職場では単調な仕事ばかりを押
しつけられ、家庭では家族に尽くすこ
とを期待される。いずれの場において
も中心的な役割を担うのは男性ばかり
で、女性はすみっこで補助的なことば
かりをやらされる。当然、経済的にも
不利な状況におかれるし、社会的地位
は低いままだし、自由は奪われている
。こんなやりがいのない仕事はいやだ
、生きがいのない人生はいやだ、とい
う救いのなさこそが、女たちを英語に
突き動かす原動力だと言われる。企業
に就職すれば経済的にも社会的にも地
位と安定が約束される男性たち(それ
も今や夢物語にすぎないけれど)とは
対照的に、その道を絶たれた女性たち
がすがりつくもののひとつが、英語だ
ということになる。ぼろをまとって床
にはいつくばって毎日を送るシンデレ
ラが舞踏会を夢見るように、日本の女
たちは英語に夢を託す。---私たちは
これまで、淡いあこがれを抱いて英会
話スクールに通うようにみえる女性た
ちが、実は英語をヨガやエステのよう
に消費の対象とみなしていたり、英語
講師という、生徒からは仰ぎ見られる
存在であるはずの女性たちが、世知辛
いビジネスの裏側を明かしたりするの
を見てきた。さらには、英語を仕事に
する女性たちがその不安定さやしんど
さを吐露したり、あっさり辞めてしま
ったり戻ってきたりする姿も目にした
し、英語に救われているようにみえる
女性が「女は英語では幸せになれない
」と言い放つ声も聞いてきた。女性た
ちは英語を妄信することなく、その力
を疑い、問い直してもいた。
北村文
『英語は女を救うのか』(2011)p.37,196
人間が出会うと、そこには必ず
「値踏み」というものが発動する。同
性だろうと異性だろうと一緒。人は相
手が自分より「高い」のか「低い」の
か見極めようと(というか「分類して
しまおうと」)するのである。そんな
ことない、私はそういうのと関係ない
、と否定したい人もいることだろうが
、中学や高校で、この「値踏み」を前
提にグループが形成されることまでは
否定できないと思う。「高い」子は「
高い」子で集まる。その様子を見つつ
「中間層」が決まり、そこにもれた子
=ほぼ「低い」子がなんとなく集まる
。そうして新学期は始まるのだ。
豊島ミホ『底辺女子高生』(2006)p.31-2
鬼嫁-それは善良な会社員、カ
ズマに対して罵詈雑言を浴びせ、理不
尽な要求を突きつけても平気な顔をす
る鬼のような嫁のこと。本来愛し合っ
て結婚したはずの2人なのに、なぜこ
うなってしまったのか。
カズマ『実録鬼嫁日記』(2005)p.14
この……代物ですって? あ
あ、そう、そうなの。あなたはこうい
うことが自分と何の関係もないと思っ
ているわけね。あなたは今朝クローゼ
ットに行き、なんていうか、そのもっ
さりした青いセーターを選んだ。ほか
に考えることがあるから、何を着るか
なんて気にしてられない、とでも言い
たげにね。でも、あなたは知らないで
しょうけれど、そのセーターはただの
青色でも、ターコイズ色でもラピス色
でもなくて、実はセルリアン色なの。
2002年にオスカー・デ・ラ・レンタ
が、セルリアンのドレスのコレクショ
ンを発表したことなんて、どうせうか
つにも知らないんでしょう。それに、
たしかあれはイヴ・サンローランだっ
たはず、セルリアンのミリタリー・ジ
ャケットを発表したのは。そんなわけ
で、セルリアンは8人ものデザイナー
のコレクションで次々とお目見えした
のよ。それからだんだんデパートに行
きわたり、とどのつまりがあの哀れっ
ぽいカジュアル・コーナーにたどり着
いて、在庫処分の箱からあなたに救い
出されたってわけ。けどね、その青色
は何百万ドルものお金と、数え切れな
いほどの人たちの仕事を象徴している
の。あなたがファッション業界とは無
関係に、自分でセーターを選んだ、な
んて顔をしているのは何とも滑稽なの
よね。あなたの着ているそのセーター
は、この部屋にいる人たちの手で、あ
なたのために選ばれたのよ、山のよう
な選択肢の中からね。
アライン・ブロッシュ・マッケンナ
『プラダを着た悪魔』(2006)
フェミニスト・ファイト
・クラブ(FFC)のルール
ルール1:フェミニスト・ファイト・ク
ラブについて語らなければならない。
ルール2:フェミニスト・ファイト・ク
ラブについて、なにがなんでも語らな
ければならない!!!
ルール3:私たちの敵は男性上位制であ
って、女性同士で戦うつもりはない。
ルール4:FFCのメンバーであるという
ことは、ほかのすべての女性を助ける
と誓いを立てたということだ。戦う仲
間とは讃え合おう。
ルール5:FFCは来る者を拒まない。上
下関係もない。みんな同じ仲間だ。
ルール6:「やめろ」「力を抜け」「降
参しろ」などという声が聞こえてもす
べての女性が平等を手にするまで戦い
は終わらない。
ルール7:平等になるには、きっとまだ
しばらくは時間がかかる。だから、お
気に入りのスウェットを着ていよう。
ルール8:傍観者はいらない。全員で戦
おう。
ジェシカ・ベネット『フェミニスト
・ファイト・クラブ』
(2016)p.17

<大衆映画における働く女性のステレオタイプ>

『ワーキング・ガール』(1988)の
キャサリン・パーカー

『あなたは私の婿になる』(2009)の
マーガレット・テイト

働く女性のステレオタイプは、だいたいにおいて魅力的でない。大衆向けに描かれるワーキング・ウーマンと言えば、仕事熱心のあまり家庭をめちゃめちゃにしてしまうか(映画『ワーキング・ガール』のシガニー・ウィーバーしかり、『あなたは私の婿になる』のサンドラ・ブロックしかり)。(サンドバーグ p.34-5)

『ケイト・レディが完璧な理由』(2011)の
ケイト・レディ

仕事と家庭を両立させようとしてつねに急いでいたり、罪の意識に駆られたりしている(『ケイト・レディが完璧な理由』のサラ・ジェシカ・パーカーはその典型だ)。(サンドバーグ p.35)

FOXニュースのグレッチェン・カールソンが、
かつての上司ロジャー・エイルズをセクハラ
で訴えた事件を映画化『スキャンダル』(2019)

FOXの人気キャスターのビル・オライリーが
複数の女性からセクシャル・ハラスメントで
訴えられた(2017)

男性CEOがワークライフバランスについて話す
(2016)

<アメリカの雇用・賃金差別の裁判>

ジリアン・トーマス『雇用差別と闘う
アメリカの女性たち』(2016)

1964年公民権法(1964)の第7編 Civil
Rights Act of 1964 Title VII[実際の映像]

フィリップス事件 Phillips v. Martin
Marietta Corp.(1971)

ドサード事件 Dothard v. Rawlinson
(1977)

ビンソン事件 Meritor Savings Bank,
FSB v. Vinson(1986)

プライス・ウォーターハウス事件のアン・
ホプキンス Price Waterhouse v. Hopkins
(1989)[約22分]

ジョンソン・コントロールズ事件
International Union, United Auto
Workers of America v. Johnson
Controls, Inc.(1991)

ハリス事件 Harris v. Forklift
Systems, Inc.(1993)

ジェンソン事件 Jenson v. Eveleth
Taconite Co.(1997)を参考にした映画
『スタンド・アップ』(2005)アメリカ初の
セクシュアル・ハラスメント訴訟

バーリントン・ノーザン事件 Burlington
Northern & Santa Fe Railway Co. v.
White(2006)

Ledbetter v. Goodyear Tire &
Rubber Co.(2007)

変化の顔: リリー・レッドベターの同一
賃金物語(2012)

エレン・パオのインタビュー: 性差別に
関するシリコンバレーの裁判(2015)

ヤング事件 Young v. United Parcel
Service, Inc.(2015)

※このページは、シェリル・サンドバーグ『LEAN IN』(2013)、ジョアン・リップマン『女性がオフィスで輝くための12カ条』(2018)、
ジリアン・トーマス『雇用差別と闘うアメリカの女性たち』(2016)を参考にしました。

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