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ワーキング・クラス

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ヤングスタウンとマホニング郡のビデオツアー
(2015)

自信過剰効果

ヒラリー・クリントンの大統領選挙の資金
集めイベントにて(2016)

おおざっぱに言ってしまえば、トランプ支持者の半分は、私が「惨めな人々のバスケット」(the basket of deplorables)と呼ぶ場所に入れることができます。そうでしょ。人種差別主義者、性差別主義者、同性愛嫌悪者、外国人嫌い、イスラム恐怖症、その他なんでもあり。

『怒りの葡萄』(1940)のトム・ジョード

『波止場』(1954)のテリー・マロイ

『オール・イン・ザ・ファミリー』(1971-9)
のアーチー・バンカー

『マリード・ウィズ・チルドレン』(1987-97)
のアル・バンディ

『ザ・シンプソンズ』(1989-)
のホーマー・シンプソン

デール・マハリッジ、マイケル・ウィリアム
ソン『繁栄からこぼれ落ちたもうひとつの
アメリカ』(2011)

ブルース・スプリングスティーンの日本公演(1985)

ブルース・スプリングスティーン
『Youngstown』(1995)の歌詞の抜粋

「父は溶鉱炉で働いた
炉を地獄よりも熱く保つ仕事」
「父はオハイオで職に就いた
第二次世界大戦から帰還後のこと
今では鉄くずとがれきが残るだけ」
「ここの工場で作った戦車と爆弾で戦争に勝った
韓国やベトナムに息子たちを送り出した
今になって思う 一体何のために死んだのかと」

ブルース・スプリングスティーンのメッセージ
(2020)

スタインベックの小説『怒りの葡萄』(1939)のトム・ジョード、映画『波止場』(1954)のテリー・マロイの描かれ方を見ればわかるように、エリートはワーキング・クラスの努力や苦しみを必死に理解しようとしていた。
 だが今では、ワーキング・クラスへの無理解が広がっている。ワーキング・クラスに無神経な態度を示す場合さえある。この現象を象徴しているのが、1971年から79年にかけて放映され、大人気を博したテレビドラマ『オール・イン・ザ・ファミリー』である。そのなかで、主人公の肉体労働者アーチー・バンカーは、大学に通う長髪で聡明で進歩的な義理の息子とあからさまなほど対照的に描かれている。偏狭で粗野で無知、性差別や人種差別の激しい人物である。これは、このテレビシリーズのプロデューサーだった進歩派のエリート、ノーマン・リアが抱いているイメージによる(リアは後に『ピープル・フォー・ジ・アメリカン・ウェイ』という人権擁護団体を創設している)。1980年代後半から90年代にかけては、テレビドラマ『マリード・ウィズ・チルドレン』が人気を博し、その主人公の婦人靴セールスマン、アル・バンディが愚かな人物として表現された。テレビアニメ『ザ・シンプソンズ』ではホーマー・シンプソンが、「がさつで、太りすぎで、無能で、不器用で、浅はかで、アルコール依存症ぎりぎり」というワーキング・クラスのイメージどおりの男として描かれている。ホーマーは原子力発電所で安全管理官として働いているが、ずさんな仕事ぶりで絶えず事故を起こしている。
 現在では、多少の例外はあるものの(真っ先にブルース・スプリングスティーンの歌詞が思い浮かぶ)、こうした侮蔑的なイメージが横行している。平等を約束することを誇りにしている国らしからぬ事態である。(ウィリアムズ p.11-2)

ジョーン・C・ウィリアムズ『白人労働者階級
のアメリカ人が大学に進学しない理由』(2017)

中間層を構成するワーキング・クラスの人々は、未開の地の異民族か何かのように見られることを嫌う。富裕層が貧困層に見せるような偽善的な心づかいを嫌がる(貧困層も嫌がるだろうが、それはまた別の話だ)。そうではなく、自分たちが必死に築きあげてきた生活が尊重されることを求めている。仕事や生き方が評価されることを望んでいる。彼らは送電線を修理し、下水道を管理し、列車を走らせている。私たちの命を救う乳がん検査の医療機器を製造し、私たちが道端でけがをすれば救急車に乗って駆けつけてくる。彼らは尊厳を求めているのであり、十分それに値する人々なのだ。(ウィリアムズ p.16-7)

民主党支持者だった2人はトランプ氏に
投票した(2017)

ドナルド・トランプの「家を売るな」演説
(2017)

ドナルド・トランプの「デプロラブル」演説
(オハイオ州シンシナティ 2019)

連邦議会の一般教書演説に招待され、ドナ
ルド・トランプ大統領より大統領自由勲
章を授与されたラッシュ・リンボー(2020)

ゴスペル歌手のマドンナ・マッシー

ルイジアナ南西部共和党婦人会のある会合では、ゴスペル歌手のマドンナ・マッシーに出会った。彼女はテーブルの向かい側の席からわたしに、「ラッシュ・リンボーが大好き」なのだときっぱり言った。以前のわたしなら、リンボーは独善的な人だと思っていたので興味も示さず、むっとして話題を変えていただろう。けれどもそのときはマドンナにこうきいた。「かれのどこが好きなのか、聞かせてもらえる?」と。一週間後、地元のスターバックスでマドンナといっしょに甘いアイスティーを飲みながら、わたしはリンボーのどこに魅力を感じるのか尋ねていた。「あの人が"フェミ・ナチ"-つまり、男性と対等になりたがって女性の権利拡張を過剰に訴えるフェミニスト-を批判するところ」わたしはしばらく黙って、その意見について考えていた。するとマドンナはわたしにどう思うかときいた。わたしが答えると、彼女は「でもあなたはとてもいい人だわ」と言った。そこから、わたしたちはリンボーが考え出したあだ名("共産リブ[リベラルの仮面をかぶった共産主義者]""環境過激派[原始の生活に戻るべきだと主張するゆがんだ環境保護主義者]")のひとつひとつについて話をした。すると最後には、マドンナの心の底にある思いが見えてきた。彼女は自分がリベラル派の人々から侮辱されているように感じていたのだ。そして、そうした侮辱からリンボーが守ってくれていると思っていた。「リベラル派はこう思っているのよ。聖書を信じている南部人は無知で時代遅れで、教養のない貧しい白人ばかりだ、みんな負け犬だって。わたしたちのことを、人種や性や性的指向で人を差別するような人間だと思ってるのよ。それからたぶん、でぶばかりだってね」(ホックシールド p.35)

A.R.ホックシールド『壁の向こうの住人たち』(2016)

列に割り込む人々
 あれを見て! 前方で列に割り込もうとしている人たちがいる! あなたはルールを守っているのに、彼らは守っていない。割り込みをされて、あなたは後ろへ押しやられているような気分になる。どうしてあんなことができるのだ? いったい誰だ? 黒人もまじっている。連邦政府が推し進める差別撤廃措置を通じて、あの人たちには、大学やカレッジでも、職業訓練や雇用でも、福祉給付金の支給、無料の昼食サービスでも優先枠が与えられていて、人々の心の中にも、以下に述べるように、何か秘密の場所を占めている。女性、移民、難民、公共セクターの職員たち-まったく、きりがない。あなたのお金はあなたが管理も同意もしていないリベラルの同情というざるに注がれて、湯水のように使われている。(ホックシールド p.194)

『フロリダ・プロジェクト』(2017)

「リベラルはわたしたちに、黒人や女性や貧しい人に同情してもらいたがります。もちろん、わたしも気の毒だと思いますよ、ある程度はね」ある温厚そうなレストラン経営者は、わたしにそう言った。「話を聞くと、胸が痛みます。しかしときたま、自分はだまされてるんじゃないかと思うんです。応募してきたから採用したのに、出勤してこないやつがいたりするとね。続けて失業保険がもらえるように、就職活動をしたっていう実績を作りたかっただけじゃないのかと勘ぐりたくなるわけですよ。このあいだも<ウェンディーズ>にひとりの女がやってきて、こう言うんです。自分にはふたりの子供がいるんだけど、ホームレスだから、ホテル住まいができるだけの給料がほしいってね。わたしは、子供たちはどこにいるんだとききました。すると女は「母にあずけてきました」と言いました。じゃあ、きみはお母さんといっしょに暮らしていないのかい? って話ですよ。(ホックシールド p.207-8)

日本車を壊すアメリカの労働者(198?)

ホンダ オハイオ州メアリーズビル
自動車工場のCM(1992)

ホンダ アコード40周年記念

ナショナル・スシ・デー(2015)

『Traficant: The Congressman Of
Crimetown』(2015)

ドナルド・トランプとジム・トラフィカント
の貿易に関するスピーチ

ドナルド・トランプとジム・トラフィカント
の不法移民に関するスピーチ

『Thank You For Your Service』(2012)

ゼネラル・ミルズ『チュリオス』(2013)

他愛ないCMだが、放送されるとすぐにネットで炎上した。なぜ?
 そのCMのママは白人でパパは黒人だからだ。それだけで「黒人と白人の夫婦なんて見たくない」「吐き気がする」「放送を中止しろ」なんて言葉が飛び交った。(町山 p.284)

ラヴィング対ヴァージニア州裁判(1967)

コカ・コーラ『アメリカ・ザ・ビューティフル』(2014)

「せっかくの名曲が台無しだ」「ここはアメリカだ。英語が嫌なら出て行け!』などのヘイト・コメントがYouTubeやフェイスブックにあふれた。
 彼らの心には、近い将来ヒスパニック(スペイン語系)が米人口の3割を超え、逆に白人が5割を切ることへの不安や、白人以外が「アメリカ人」を名乗ることへの嫌悪感などがあるのだろう。(町山 p.283)

第31回世界卓球選手権(名古屋 1971)

『フォレスト・ガンプ』(1994)で描かれた
卓球のシーン

米中ピンポン外交の簡単な説明(2011)[1]

※このページは、ジョーン・C・ウィリアムズ『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』(2017)、
金成隆一『ルポ トランプ王国2』(2019)、A.R.ホックシールド『壁の向こうの住人たち』(2016)、
町山智浩『知ってても偉くないUSA語録』(2014)p.282-4を参考にしました。
「」(ウィリアムズ、ホックシールド p.)と記載されている部分は、それぞれ、ジョーン・C・ウィリアムズさん、A.R.ホックシールドさんの個人的見解です。
p.は著書のページ数から引用したものです。

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