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有害な男らしさの理解

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『スパルタの海』(1983)の戸塚ヨット
スクールの有害な男らしさ

テイラー・スイフト『The Man』(2020)

レディー・ガガ『Til It Happens To
You』(2015)

『ハンティング・グラウンド(狩り場)』
(2015)

'ミズーラ'レイプ被害者がレイプ犯の告白を
こっそり記録(モンタナ州 アメリカ 2015)

フラリーマン(AbemaTV)

夫は本当に「仕事で家にいない」のか
「ごめん。今日は仕事で遅くなるから、先に寝ていて」
 世の男性たちは、平日も土日も仕事でとても忙しい。本当は家に帰って子供の面倒を見たいのだけれど、会社のせいで帰れないといいます。
 みなさんは、よく耳にするこの言葉をそのとおりに信じていますか。私は疑っています。
 もちろん、「早く帰って家事や育児を分担したい」と本気で願っているのに、会社に長時間労働を強いられて帰れない男性はいます。彼らは早く帰宅できれば子供の世話をするでしょう。また、実際に仕事を調整して早く帰宅し、家事・育児を担っている男性も少なからずいます。(藤田 p.67)

シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』(1949)

フランスの作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールの「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という有名な言葉があります。私自身、自分の女性としての生きづらさを人生の折々に感じるとき、この言葉を思い浮かべたりするのですが、新生児だったころからの息子たちの成長を身近で見ていると、男の子もまた「男に生まれたというよりも、”男になる"のだな」という気がしてくるのです。(太田 p.6-7)

グレイソン・ペリー『男らしさの終焉』(2016)

弱音を吐かず、タフで勇敢なことは悪いことではないでしょうが、繊細で優しくおとなしい気質の男の子が、その個性を自分で否定的に感じてしまう弊害はないでしょうか。
 たとえば「男なら出世を目指して当然」というように、社会的な成功に「男として」のポジティブな価値をおくという感覚は、いまの日本社会にもいまだ根強いでしょう。社会的な成功はいいことでしょうが、では、成功したといえるような状況にならなかったら「男としてダメ」なのでしょうか。また、自分は成功しても、成功していないほかの男性を見下げるような意識をもつことはことでよいことでしょうか。(太田 p.22)

#アホ男子母死亡かるた書籍化プロジェクト
@ahodanshi88、まきりえこ
『#アホ男子母死亡かるた』(2014)

ひとつめは、ほんとうに「男子あるある」なのかということ。実は性別関係なく、「子どもあるある」なのではないか? という疑問です。私自身、子ども時代はよく弁当箱を学校に忘れていましたし、学校の準備をきちんと前日にやるような子どもでもありませんでした。(太田 p.25)

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 栄光
のヤキニクロード』(2003)

私は10代のころ、知り合いの小学生の男の子にいきなり背後から「カンチョー」と強く肛門付近を指で突き刺されたことがあり、そのときの不快感と嫌悪感は、長く経ったいまも相当強く記憶に残っています。あれはやはり性被害だったとしか思えません。(太田 p.29-30)

『ドラえもん』のしずかちゃんの
スカートめくり

かつては「スカートめくりがありました。私たちの世代が小学生のころには、ほんとうに教室で「スカートめくり」をする男子がいたのです。私の体感でしかありませんが、私の小学生時代と比べると、いまは悪ふざけとしてスカートめくりをする小学生は相当減ったでしょう。私の息子やその周辺でも耳に入ったことはありません。仮にやったら大きな問題になるはずです。(太田 p.31)

『嵐にしやがれ2時間SP』(2020)

この件はインターネット上で瞬時に話題になり、SNSには亀梨さんと、このような演出をした番組への非難のコメントがあふれました。同じように違和感を覚えた人が多かったのでしょう。
 亀梨さんは人気タレントですが、それとは関係なく非難の声が大きくあがったのは、「スカートめくりはそもそもしてはいけないし、それを武勇伝のように扱ってはいけない」という常識が、時間をかけて社会に定着したということでしょう。(太田 p.32)

1.ジャーナリストの伊藤詩織さんが、記者の
山口敬之氏から受けた性暴力を実名で告発
した事件(2017)

2.財務省の福田淳一事務次官によるテレビ記者
へのセクハラ事件(2018)

3.広河隆一氏による複数の女性に対する
セクハラ・性暴力が告発された事件(2018)

1~3.どの件でも、加害男性はまったく反省しているようには見えず、それどころか自分のことを被害者であると感じているようにさえ見えます。(太田 p.50)

複数の大学医学部の入試において女子受験生が
性別を理由に得点を低く調整されていた事件
(2018)

これ以上ないほど明白で露骨な性差別であったにもかかわらず、ネット上には「結婚や出産で仕事をやめてしまう女性がいる以上、減点は合理的」などと擁護する意見がみられました。(太田 p.51)

1.アイラビスタ銃乱射事件(2014)

2.江南カラオケ殺人事件(2016)

3.秋葉原における無差別殺傷事件(2008)

1~3.インセルによる暴力
(インセルとは Wikipedia)

自分の「男はつらいよ」という意識、鬱屈を「女性が優遇されているせいで自分たちが割を食っている」という反感に結びつけてしまうと、明らかにこれは有害です。
 ほんとうに自分を苦しめているのは女性ではなく、性差別社会における「有害な男らしさ」の呪縛だ、ということが往々にしてあると思います。自分の生きづらさを女性叩きでごまかさず、ほんとうの原因を見極めて「有害な男らしさ」の呪いを解けたら、いまより救われる男性は多いのではと思います。(太田 p.60)

Emma Watson He For She Speech
(日本語訳 2016)

七生養護学校事件(2003)

東京都日野市の都立七生養護学校(当時)でおこなわれていた障害児向けの性教育を、複数の議員とマスコミが「ポルノまがい」と攻撃し、中止に追い込んだ事件でした(この事件は最高裁まで争われ、議員の介入が不当なものであったとの判決が出ています)。それ以来、日本の性教育は諸外国から大きく遅れたままの状況です。(太田 p.109)

東京・足立区の中学校で「性教育」自民都議
が不適切と批判(2018)

#なんでないのプロジェクト[リンク]

スウェーデンの大学院で公衆衛生を学ぶ福田和子さんが立ち上げた「#なんでないの」プロジェクトの解説を見ると、避妊シール、避妊注射など、女性が自分で主体的にできる避妊方法が世界にはたくさんあるにもかかわらず、日本では選択肢が非常に限られていることがわかります。こういう状況自体が大問題なのですが、少なくとも現状がそうである以上、男性がきちんとコンドームを装着することは避妊のためにもっとも重要なことです。(太田 p.118-9)

男性特権について(出口真紀子さん)

星野:男性特権と女性差別って、コインの裏表ですよね。社会福祉学や教育社会学の研究をされている出口真紀子さん(上智大学教授)に聞いた話では、講義名に「女性差別について」と掲げたときより「男性特権について」と掲げたときのほうが、男子学生の食いつきがよかったそうです。女性差別は自分たちに関係のない話だと思うけれど、「男性特権」だと自分たちにどんな特権があるのかと興味をもつということですね。(太田 p.147)

ホワイトリボンキャンペーン(2016-)

「性暴力、DV、さまざまなハラスメント…暴力をなくしていくカギのひとつ、それは暴力を振るわない大多数の人たち、とりわけこの問題に『無関係だ』と考えがちな男性たちが、主体的に解決へ向け行動すること」という言葉に、強く共感します。いままでの日本社会にはそれが不十分すぎました。
 これからの男の子たちには、自分が加害者にならないだけではなく、性暴力をなくすために主体的に動く大人になってほしいと願っています。(太田 p.181)

お尻相撲『24時間テレビ』(2018)

肉布団コント『志村けんのバカ殿様』(2019)

ちょっと信じがたい時代錯誤ぶりで、暗澹たる気持ちになりました。
 こういうことを指摘すると「お笑いなんだから」「ジョークがわからない」と批判されがちですが、笑いの形をとっているからこそ軽く受けとめられがちで、よけいに深刻なのだと思います。(太田 p.189)

『保毛尾田保毛男』(2017)

2017年に、フジテレビの番組で「保毛尾田保毛男」という同性愛者を戯画化したキャラクターにタレントが扮したコントが放映されました。これは90年代に人気を博したコントの再演ということでしたが、許されない差別表現だと批判を集め、フジテレビはのちに謝罪しました。性的指向や性自認(SOGI)を笑ったり侮蔑したりする表現は、20,30年前のメディアでは日常的でしたが、現在では許されないことが常識として確立される時代となったと感じたできごとでした。(太田 p.197)

『ドラえもん』のしずかちゃんの入浴シーン

『ドラえもん』で、のび太君が、しずかちゃんの入浴シーンやスカートの中を偶然に見たり、見えそうになったりして「ラッキー」と喜ぶ場面があります。以前より頻度として減ったり、裸の体が直接映らなくなったりという変化はあるようですが、まったくなくなったわけでもないようです。こういうシーンが、ストーリー上の必然性もなく、単なる「ちょっと笑えるエピソード」として挿入されることが問題だと思っています。
 現実には、たとえ相手の「うっかり」であっても、下着や入浴中の姿を見られてしまったというのは女性にとって相当不快な記憶で、深い心の傷になることもあるものです。そんな深刻なシチュエーションを「ギャグ」とか「ほほえましいエピソード」という位置づけで描くのは、性被害を軽視する感覚につながらないでしょうか。(太田 p.197-8)

ヤレる女子大学生RANKING『週刊SPA』
(2018)

この記事がSNSで拡散されると、「女性軽視以外の何ものでもない」「見た目、洋服、通う大学で、性的合意なんて表されません」などと大きな批判が起き、ネット上の抗議署名に大勢の賛同が集まりました。(太田 p.203)

「『女子アナ」は女性の成功か?」(2020)

先日、昭和女子大で「『女子アナ』は女性の成功か?」という講演をしたら、ある有名男子校の男子中学生が3人もそこに来ていました。先生に連れられてではなく、自分で個々に応募してきたのだそうです。女子大の先生たちもみんな感激して、いちばんリーチしたくてもできなかった層が来てくれた!って。(太田 p.233)

『鬼滅の刃』(2019)

主人公の炭治郎が「俺は長男なんだから」と自分を奮い立たせたり、「男に生まれたなら、苦しみに耐えろ」といったセリフが端々に出てくるのは気になります。困難を克服する努力は素晴らしいことだけど、違う言葉で奮い立たせることはできないものでしょうか。「妹のために頑張るんだ」とか「年長者の自分が頑張らなきゃ」という気持ちはもちろんいいのですが、そのままそう言えばいいのに。別に「男だから」じゃなくてもいいのにな、と思って、つい息子にも言ってしまいます。(太田 p.237)

Gillette『We Believe: The Best Men
Can Be』(2019)

旧来の「男らしさ」をやめよう、すでに何かが変わりはじめている、次世代のために正しいことをしよう、と男性たちに訴えるものです。(太田 p.238)

『これが特権の使い方』(2020)

2020年5月25日、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官によって路上に押しつけられ、首を圧迫されて死亡するという衝撃的な事件が起きました。これに対する大きな抗議行動がアメリカの各地で起き、大変な状況になっています。そんな渦中でTwitterに投稿されたある写真には、座り込んで抗議する黒人プロテスターを守るために、白人たちが腕を組んで列をつくり、警察と対峙している姿がありました。投稿者はこれについて「This is what you do with privilege.(これが特権の使い方)」と記していました。(太田 p.248)

カナダ オンタリオ州『あなたは誰を助ける?』
(2015)

目の前に差別や暴力が展開しているとき、何もしないというのは加害者側に加担することだというのが、とてもよく伝わる動画です。(太田 p.251)

オーストラリア ビクトリア州『Respect
women: call it out–active bystander』
(2019)

住友生命カレンダー(1989)

いまでは考えられませんが、1990年ごろは、生命保険会社の営業の人が顧客にサービスとして女性のヌード写真のカレンダーを配る風習がありました。もらった側も、それを会社の机上に堂々と飾ったりしていたのです。いまどきこんな職場があったら「環境型セクシャルハラスメント」として問題視され、雇用主が放置していたら法的責任も問われかねません。(中略)「行動する女たちの会」は、90年10月、三井生命に対して質問状を送り、「職場でこのようなカレンダー類を目にする女性はどのように感じるとお考えですか」と問題提起しました。話し合いの結果、三井生命はカレンダーの図柄を変更しました。(太田 p.253)

1.『VERY』「『きちんと家のことをやるなら
働いてもいいよ』と将来息子がパートナーに
言わないために今からできること」(2019)

2.『LEE』「言ってませんか?"男だから"
"女だから"暮らしの中で無意識に性差別
してるかも!?」(2020)

1,2をふまえて

「男性のつらさを減らすためにも、性差別をなくすためにも、男の子の育て方がキーになる」ということを、多くの人、とくに男の子の子育てにかかわっている人たちが思いはじめている時代状況を感じています。(太田 p.261)

Uber Eats『トレーニング篇』(2020)

「絶対モテるだろう」という感じの、40過ぎの独身の男の友人がいます。彼を含めたメンバーで飲むと、いつも同じおじさんが彼に、「なんで結婚しないんだ」と必ず迫るんですよ。「結婚しないということは遊んでいたいんだろう、子どもを産むべきだ、子どもはかわいい」、とにかく結婚しろ、しろと言うわけです。
 その人は結婚して子どもが二人いるのですが、自分が本当に幸せなら人にかまわなくていいじゃないですか。なぜそんな「シングルハラスメント」みたいなことをするのかと思うに、あれはたぶん羨ましいのだろうと思うんです。
田中: 自由な彼に対して、ですね。「こっちへ来い、仲間になれ」と男が男にかける呪いですね。
小島: そう、あれは呪いなの。男が男にかける呪いです。自分が背負わされている重荷より、一個でも軽いやつを見ると悔しくてたまらない。だから「結婚しないと一人前じゃないよ」という言い方で背負わせようとする。(小島、田中 p.40-1)

『お笑い向上委員会』(2013)(動画はその
回のものではないが雰囲気を感じるため)

男芸人がギャグの一環として女芸人の胸を揉みしだいたり、お尻を触ったりするシーンを時折見かけるが、彼らはなぜ逮捕されないのだろうか。(武田 p.158)

山梨県立富士北陵高校『セクスチェンジデー』
(2014)

『ジャスティス・リーグ』(2017)で仲良く
できない男性陣を取り持つワンダーウーマン

重ねドルチェ『カサネテク 無敵の合コン
テクニック』(2017)

女性が男性に言うと喜ばれる「さしすせそ」です。「さ」は「さすが」、「し」は「知らなかった」、「す」は「すごい」、「せ」は「センスいいですね」、「そ」は「そうなんですか」となっています。(中略)大学の授業で、「女性は男性に対して簡単に「すごい」と言ってはいけない」と注意を促しました。すると、次のように授業の感想を書いてきた女子学生がいました。
 「先生は男性に「すごい」と言ってはダメだとおっしゃいますが、女性が言う「すごい」は、あくまで「バカだね」が省略されたものです。私たちは男性に「すごい(バカだね)」と伝えているんです」。(田中 2019 p.36-7)

男女が逆転した世界を描いた『オプレスド
・マジョリティ』(フランス 2010)

結局は、監督の女性が、いかに男性のことを理解していないかだけが浮き彫りになった。彼女は女優が演じる男たちの無神経ぶりと怠慢さを通して、男というものは女性に猥褻な行為をしてもかまわないと思い込んでいるとほのめかしていた。だが、それは大多数において男性のほうがより危険な仕事に就き、それにより女性を庇護し、そして間接的には女性の自由を守っていることを考えると、あまりに偏りすぎた見方だ。また、この監督が(男性の演じる)女性を弱くて無力な存在に描いているのも興味深い。いったい彼女は女性について何を言おうとしているのだろう?(ジンバルドー、クーロン p.238)

『軽い男じゃないのよ』(2018)

『フリー・トゥ・プレイ』(2014)に登場した
3人のゲーマーは父親のいない家庭で育った

『ジャーニーマン』(2007)(ボーイズ・トゥ
・メン(メンタリング・ネットワーク)を追った
ドキュメンタリー)

『フューチュラマ』(2001)の「私はロボット
とデートした」

美人の隣人のメイヴィス「あとでうちに来て仲良くしない?」
ビリー「ただいちゃつくためだけに向かいの家まで歩く気はしない。遠すぎ」
ナレーター「このシーンの何が問題か、気づきましたか?」
ロボットを手に入れる前には、ビリーはおそらく新聞配達を頑張って金をため、その金をメイヴィスとのデートに使っただろう。首尾よくセックスして、いつか子どもができたかもしれない。
ナレーター「でも、ティーンエイジャーがロボットとデートできる世界では、そんな面倒なことをする理由がどこにあるでしょう」
当然のごとく、まもなくその惑星はエイリアンに破壊された。(ジンバルドー、クーロン p.131-2)

『21ジャンプストリート』(2012)に
描かれる、かつての男らしさ(不良)

13歳の時に女性教師にレイプされた
アンドリュー・ペイリー

動画の最後に、彼はその出来事を「爆笑もの」だと思うと言っている。なぜなら、そう考えるしかないからだそうだ。それ以外に彼には自分に起きたことを処理する方法がない。それはすべての思春期の少年のファンタジーだと考えられているのだから。 (ジンバルドー、クーロン p.240-1)

『レース・トゥ・ノーウェア』(2009)(オレゴン
州のある小学校が宿題を禁止したところ、子どもた
ちが以前よりより多くを学び、テストで良い成績を
取り始めた

そもそも男性に対する性差別
については、どうして誰も話したがら
ないのだろう? なぜ女性はオーラルセ
ックスをしてくれないという理由で恋
人を捨てることの是非について公の場
で討論したり、年下の男性と寝るとど
んなに力がみなぎるかを話したり、女
性ドライバーによる女性客しか乗せな
いタクシー会社を作ったり、さらには
男性にはもっと税金を払わせるべきだ
と提案したりすることさえ許されるの
に、男性が同じことをするのは許され
ないのだろうか? ダブルスタンダード
というと、いつも女性側が損をする側
であるかのように語られるが、新しい
レンズを通して見ると、男性は少なく
とも女性と同じくらいの頻度で割を食
っている。
フィリップ・ジンバルドー、ニキータ・
クーロン『男子劣化社会』(2015)p.238
無意識のバイアスを測る
"IATテスト"とは何か
人々が「心の中にあるもの」
をいつも語っているわけ
ではないことはよく知られています。
また、「心の中にあるもの」
を正確に知り得ているか
どうかも疑わしいことです。
こういった乖離について理解
することは、科学的心理学
にとって重要なことです。
IATテスト(Implicit
Association Test)では、
意識と非意識の乖離という
問題について、これまでの
手法よりもはるかに説得力のある
技法について紹介しています。
IATテスト ホームページ
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1.おもちゃで遊んでいる子どもを見ると、
その子どもが車や機械で遊んでいる場合には
男の子、ドレスを着たり、人形で遊んでいる
場合には女の子を想像していませんか。
連想する

  • 男の子
  • おもちゃ
  • 自動車、バイク
  • 銃、コンピュータ
  • 性格
  • 力が強い
  • リーダーシップ
  • 得意科目
  • 理科、数学
  • 動物
  • 昆虫、爬虫類
  • 青、灰色
  • 女の子
  • おもちゃ
  • ドレス、人形
  • カラフルなバッグ
  • 性格
  • 話すのが好き
  • 料理が得意
  • 得意科目
  • 国語、美術
  • 動物
  • 兎、ハムスター
  • 赤、ピンク
もし、私が、実際には
ソフィーはエドワードだと言ったら
あら!
それは何かを変えますか?
私は多分「この子は小さな女の子、
だから小さな女の子の
おもちゃをあげなきゃ」
って、思ったの。
ジャビド・アブデルモニーム
『Girl toys vs boy toys:The ex
periment - BBC Stories』
(2017)
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2.しかし、実際には自動車やバイクが好きな
女の子もいますし、赤やピンク色の服が好きな
男の子もいます。そして、ブロックや積み木で
遊ぶ子どもには男の子も女の子もいます。
つまり、本来ならば性別に関わりなく
おもちゃで遊んでいる姿が自然なのです。

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3.それでは実際に自動車やバイクで遊んでいる
男の子と女の子を並べて見てみましょう。

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4.次にピンク色の服や装飾品を身につけている
女の子と男の子を並べて見てみましょう。

5.何か不自然な点が見つかりましたか。
私には見つかりませんでした。もしあなたが、
何か不自然だと思ったなら、それは普通です。
何も間違っていません。
それを心理的な偏見と言います。
私は、皆さんと一緒に考えたいのです。
自分がもっている偏見を。そして、偏見を
もっている自分をそれでも愛せるように。
私の主張は直観には反しますが、
政治的には正しい。
システム1の直感では間違っていますが、
システム2の遅い思考で考えれば正しい。
もし私の主張が認められた場合、
ファッションの生産性が向上します。

システム2が自分で選んだと
信じている考えや行動も、じつは
システム1の提案そのままだったと
いうことが、往々にして起きる。
システム1こそ本書の主役である。
ダニエル・カーネマン
『ファスト&スロー 上』(2011)p.48

システム

  • 1(直観)
  • 自動的
  • 努力がいらない
  • 連想的
  • 速く、並列的
  • 不透明な処理
  • 熟練した行為
  • 情緒的
  • 因果的属性
  • 具体的・特定的
  • 原型
  • 2(熟慮)
  • 制御されている
  • 努力がいる
  • 演繹的
  • 遅く、直列的
  • 自覚されている
  • 規則が適用される
  • 中立的
  • 統計的
  • 抽象的
  • 一式

ダニエル・カーネマン、シェーン・フレデリ
ック『Representativeness revisited(PDF)』(2002)

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私はこれによって、論者のい
うような「女らしさ」というものが特
に女子の上に存在しないということを
突き詰めて知ることが出来ました。
「女らしさ」というものは、要するに
私のいわゆる「人間性」に吸収し還元
されてしまうものです。女子に特有し
て、女子を男子から分化し、女子のみ
の生活というものを基礎づける第一
原理となり、最高の価値標準となる
ものでないことが明白になりました。
「女らしさ」という言葉から解放され
ることは、女子が機械性から人間性に
目覚めることです。人形から人間に
帰ることです。もしこれを論者が
「女子の中性化」と呼ぶなら、私たち
はむしろそれを名誉として甘受しても
好いと思います。「女らしくない」
という一語が、昔から、どれだけ女子
の活動を圧制して来たか知れません。
習慣というものは根強いもので、
今でも「女らしくない」といわれると
、一部の女子は蛇でも投げつけられた
ようにぎょっとして身を縮めます。
与謝野晶子
『「女らしさ」とは何か』(1921)

一部改変
私はこれによって、論者のいうような
「男らしさ」というものが特に男子の
上に存在しないということを突き
詰めて知ることが出来ました。
「男らしさ」というものは、要するに
彼のいわゆる「人間性」に吸収し還元
されてしまうものです。男子に特有し
て、男子を女子から分化し、男子のみ
の生活というものを基礎づける第一
原理となり、最高の価値標準となる
ものでないことが明白になりました。
「男らしさ」という言葉から解放され
ることは、男子が機械性から人間性に
目覚めることです。人形から人間に
帰ることです。もしこれを論者が
「男子の中性化」と呼ぶなら、私たち
はむしろそれを名誉として甘受しても
好いと思います。「男らしくない」
という一語が、昔から、どれだけ男子
の活動を圧制して来たか知れません。
習慣というものは根強いもので、
今でも「男らしくない」といわれると
、一部の男子は蛇でも投げつけられた
ようにぎょっとして身を縮めます。

ジェンダー平等を推進し女性へ
の暴力をなくすため、男の子と成人男
性を対象として世界各地で活動するN
PO「プロムンド」から、若い男性た
ちが今の時代と自分たちの立場をどう
捉えているのかを映し出す報告書が2
017年に発表された。その名も「マン
・ボックス」と題されたレポートは、
アメリカ・イギリス・メキシコの各国
で人種的・社会経済的な人口構成を反
映させて選出した10代から20代の若
い男性4000人近くを調査し、現代の
男性性についての彼らの考えをまとめ
たという有意義なものである。プロム
ンドのリサーチでは、7つの「マスキ
ュリニティの柱」が設定されており、
それらを著しく内面化したり、それら
と強く共感している場合に、回答者は
「マン・ボックス内にいる」と判断さ
れる。7つの柱とは以下のとおり:自己
充足的である、タフにふるまっている
、身体的魅力がある、伝統的で厳格な
ジェンダー役割に従っている、異性愛
者である、性的能力が高い、攻撃によ
って争いを解決しようとする。
レイチェル・ギーザ
『ボーイズ』(2018)p.41

Helen Smith,PhD『Men on Strike』
(2013)
男たちが結婚を避けている6つの理由
1.彼らは尊敬を失うだろう
2.彼らは性別で不利をこうむる
3.彼らは子どもたちと金を失うかもしれない
4.彼らは(家から)居場所を失うかもしれない
5.彼らは自由を失うかもしれない
6.独身生活はかつてよりも良くなっている

いったん男の子たちが高校生く
らいになってしまうと、同意や性的暴
行や性的ないじめといった問題に取り
組むことが難しくなるのは、このよう
な相反関係があるからである。「本物
の男」について彼らが教えられてきた
内容と、良き男性としてあるべき姿と
は、必ずしも一致しないのだ。2015
年にテレビのコメディ番組「Inside
Amy Schumer」で放映された、フッ
トボール部のドラマ「Friday Night
Lights」をパロディにした辛辣なコ
ントは、まさにこの点を突いている。
パロディでは、新しくやってきたコー
チが、チームに「レイプ禁止令」を通
達する。選手たちは突然の新ルールに
混乱し、例外を求めて質問を連発する
。「アウェイの試合ではレイプしても
いいですか?」「相手がレイプだと思
っても、自分がレイプだと思わない場
合は?』「ぼくのお母さんが検察官で
起訴されないとわかってるときは?」
「相手が酔っ払っていて、評判が悪い
子で、誰もその子の言い分を信じなか
ったら?」しかしコーチは、レイプ禁
止を曲げない。そして大事な試合のハ
ーフタイムで、負けそうなチームに喝
を入れようとコーチはこう語る。「ど
うすれば君たちにわかってもらえるの
か。フットボールにレイプは必要ない
。フットボールに必要なのは、邪魔す
る者を力ずくでねじ伏せて、求めるも
のを手に入れることなんだ。自分は神
だ、自分にはその権利がある、そう考
えろ!」このコントは、力と支配と男
らしさとセックスについて私たちが若
者に向けて発しているメッセージがい
かに矛盾しているかを、見事に描き出
している。男の子たちは競争と支配が
すべてだと教えられてきているのに、
その考えをセックスにも当てはめたか
らといって、どうして驚くことがある
だろうか?
レイチェル・ギーザ
『ボーイズ』(2018)p.299-300

※このページは、ジョン・クラカワー『ミズーラ』(2015)、小島慶子、田中俊之『不自由な男たち』(2016)、武田砂鉄『芸能人寛容論』(2016)、
藤田結子『ワンオペ育児』(2017)、フィリップ・ジンバルドー、ニキータ・クーロン『男子劣化社会』(2017)、
田中俊之『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(2019)、太田啓子『これからの男の子たちへ』(2020)を参考にしました。
「」(太田、小島、田中、武田、ジンバルドー、クーロン p.)と記載されている部分は、それぞれ、
太田啓子さん、小島慶子さん、田中俊之さん、武田砂鉄さん、フィリップ・ジンバルドーさん、ニキータ・クーロンさんの個人的見解です。
p.は著書のページ数から引用したものです。

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