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偏見・男らしさ2

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10代後半から20代前半の男性を
集めて小規模なフォーカスグループを
つくり、セックスについてどのように
学んだか、教わっていればよかったと
思うのはどんなことか、聞き取りを行
った。グループのほぼ全員に共通して
いたのは、学校の性教育は開始時期が
遅すぎ、内容が抽象的で、実際にベッ
ドの中で行なわれることと関係なさす
ぎる、という意見であった。授業は率
直で、楽しくあるべきだ、と彼らは考
えていた。1人は、先生たちが解剖学
的な内容にばかりこだわるのは「実際
にセックスについて話すのを避けたい
から」なんじゃないかと思う、と言っ
た。避妊や病気の予防は完全に女の子
に任せられていて、男の子たちはリス
クについて無知なことが多く、自分は
不死身かのように感じていた、と彼ら
は言う。彼らが強調したのは、女性を
もっと思いやり、自分の行動に責任を
もつことを含め、男の子にセックスに
対する「正しい態度」を教えることの
重要性であった。そのような情報を伝
える役にはどんな人が適しているか、
という質問に対しては、全員一致の答
えが出た。男性で、自分たちと年が離
れすぎず、感覚がずれていなくて、頭
が良くて話が面白い、ユーモアのセン
スがある人だ。不器用そうな教授タイ
プや、中年女性はお断りだという。グ
ループの1人はこう言った。「もし55
歳くらいの女の人が教えに来たら、た
ぶん、『お母さんみたいな人にこんな
話されたくない』って思うよ」。この
フォーカスグループで出たアイデアは
、現在のプログラムにしっかり取り入
れられている。進行役の条件も例外で
はない。私が訪れたときに会った3人
はみんな30歳前後で、揃って手入れ
の行き届いた髭を生やし、ダークブル
ーのジーンズをはき、細身のフランネ
ルシャツの下からは白いTシャツが覗
いていた。間違いなくクールな3人で
ある。男の子たちはみんな、ときに反
抗的な態度を取る子でさえ、彼らを見
る目に畏敬の念がこもっていた。少年
たちの1人は私に、進行役の人たちの
いちばん良いところは、自分たちと感
覚が近くて、批判的なことを言わない
ことだと教えてくれた。「ときどき、
大人は10代の男の子のことを厄介者
だとしか思っていない、と感じること
がある」と彼は言う。自分の両親とは
セックスや恋愛について話すかとたず
ねると、話したいと思うけど、過剰反
応されるのがいやだ、と言う。「ブレ
イクやスタフォードやトリスタンに話
す方が楽なんだ。細かいことまでいち
いち説明するよう強要されないから」
。もし親にセックスについて聞けば、
「尋問されるみたいになって、それで
結局『だから話したくなかったんだよ
』って言うことになるんだ」。
レイチェル・ギーザ
『ボーイズ』(2018)p.307-8
オルウェーズのいじめ防止
プログラムでは、いじめられた子に「
事後に」手を差し伸べることを勧めて
いる。いじめっ子にその場で立ち向か
う必要はなく、後でそっと、よりリス
クの少ない方法でいじめられた子に寄
り添うというものだ。「英雄」として
称えられることはないが、いじめられ
た子には大いに救いになる。ある調査
では、いじめられた経験のある高校生
に、他の子たちにどんなことをしても
らいたいかと尋ねた。多かった答えは
、いじめられた後、家に電話をかけて
くれたり、一緒にいてくれたりするこ
とだった。ある13歳は、いじめられ
ていた間もずっと友達でいてくれた子
について次のように書いている。「そ
の友達がいたので、自分は自分のまま
でいいんだって自信が持てました。こ
のいじめで人生がすっかりダメになっ
たりしないって思えました」
エミリー・バゼロン『ある日、私は
友達をクビになった』
(2014)p.154
ジンバルドは振り返る。「かつ
て行ったものの中に、『一日異常者』
と呼ぶものがある。これは自分という
枠から抜け出すためのちょっとしたエ
クササイズで、自分のイメージにない
行動をすることで、なにが起こるかを
見るんだ。自分の額に小さな丸を描い
て、そのまま過ごすだけということも
ある。そうすると周囲の人々から違っ
た扱いを受ける。それで世界が違って
見えてくるんだ」このエクササイズで
、生徒は自分がどれだけ友達の期待に
反応しやすいかを自覚するのだ、とジ
ンバルドはいった。自分たちがどれだ
け容易で、無意識のうちに、他人の期
待に合わせているのかを認識するよう
になったのだ。彼らは他人を喜ばせよ
うとする人間であることに慣れている
。他の者たちもみな同じことをしてい
るからだ。「友人たちは期待通りの人
になってほしい、『予想通りの』行動
をしてほしいと思っています。でも最
後には、その期待に反するような行動
にとても解放感があったとみないって
います。絆を断ち切ったんです。周囲
のみなから期待され望まれるような考
え方を必ずしもする必要はないし、し
ようと思ってはいけないというのは非
常に重要です」
マーガレット・ヘファーナン『見て見
ぬふりをする社会』
(2011)p.341-2
5つの要因がやる気のな
い男の子と成績の悪い若い男性
が流行するのを推進している。
1.ビデオゲーム
2.教育法
3.薬の処方箋
4.環境による毒素
5.男らしさの低下
レナード・サックス
『Boys Adrift』(2016)表紙
社会的望ましさのバイアス
彼らが信じているものにした
がうのではなく,社会的に最
も受け入れられやすいものに
したがって回答するバイアス。
偽の合意効果
人は、自分の信念や意見や行動にたい
して、実際にそうであるよりも幅広い
合意が得られると考えがちだというも
のだ。もっと正確に言えば、ある意見
や好みをもつ人は、自分の意見や好み
が、それとは反対の意見や好みをもつ
人が思うよりも、もっと同意を得られ
ると考えがちである、というものだ。
トーマス・ギロビッチ、リー・ロス『その
部屋のなかで最も賢い人』
(2015)p.33
講演を終えて、著書を買って
くれた女性のためにサインをしている
と、その夫とおぼしき60代前半ぐら
いの長身でやせ型の男性が彼女の後ろ
に立っていた。妻が帰ろうとすると、
男性は「すぐに行くから、ちょっと待
っててくれ」と言った。
 妻は「もう行きましょうよ」とせっ
ついたが、彼は動かない。やがて妻は
あきらめて、先に出口のほうへ歩きは
じめた。サイン用のテーブルをはさん
で、彼と私は向き合った。
「恥の話は、おもしろかったですよ」
と、彼は言った。
 私は礼を言って、次の言葉を待っ
た。それだけではすまない予感がし
たのだ。
 彼は身を乗り出して「ちょっと興味
があるんですが、男性と恥の関係はど
うなんです? 何がわかりましたか」
ときいてきた。
 一瞬、ホッとした。言えることはほ
とんどないので、すぐに終わるだろう
と。「男性にはあまり面接をしたこと
がないんです。女性だけを研究してい
るので」
 彼はうなずくと「それは都合がいい
」と言った。
 急に警戒心がムクムクと頭をもたげ
た。私は無理に笑みを作り、「都合が
いいとおっしゃるのは?」ときき返し
た。「本当に知りたいのですか」と言
われて、「はい」と答えたが、本心で
はない。私は用心して身構えた。
 ところが、ふと見た彼の目には涙が
あふれていた。「われわれにも恥があ
るのですよ。深いところに。だがそれ
を話せば、たたきつぶされるのが落ち
なのです」。生々しい痛みが伝わって
きて、彼と目を合わせるのがつらくな
った。私は、男性は男性に対して厳し
いものだと言いかけたが、それをさえ
ぎるかのように、彼は「意地が悪いの
はコーチとか上司とか、兄弟とか父親
だけではないんですよ」と言うと、妻
のいるほうを指差した。
「あなたがサインしてくれた本を読む
妻や娘たちは、私が馬から落ちるのを
見るくらいなら、白馬にまたがったま
ま死ぬのを見るほうがいいと思ってい
るのです。弱みを見せろ、本当の自分
であれとおっしゃいますが、女性はそ
れを正視できない。そんな男性の姿は
見たくもないんですよ」
 彼の言葉に思わず息を呑んだ。それ
が真実だからこそ、身にこたえた。彼
は深いため息をつくと、「それだけ言
いたかったのです。聞いてくれてあり
がとう」と去っていった。
ブレネー・ブラウン『本当の勇気は
「弱さ」を認めること』
(2012)p.97-9
積極的に育児に協力する、い
わゆる「イクメン」には、脳の変化以
外にも嬉しい変化が起こることがわか
ってきています。
 イスラエルでおこなわれた研究をご
紹介しましょう。研究には41人の父
親が参加しました。15分間、わが子
と触れあった後に血液を調べると、体
内である物質が増えていることがわか
りました。それは、あの愛情ホルモン
、オキシトシンです。つまり、わが子
と触れあえば触れあうほど、父の中で
わが子に対する愛情が深まるというこ
とです。
 この研究ではさらに、もう一つ興味
深い事実が判明しました。父親と触れ
あった赤ちゃんの体内でもオキシトシ
ンが増えていたのです。父と子が触れ
あうことで、両者の体内でオキシトシ
ンが増える、つまり父子は触れあうこ
とで互いに愛情が深まり、親子の絆が
深まるということを意味するのです。
 この研究をおこなったルース・フェ
ルドマンさんは、取材でお会いしたと
きにこんな話をしていました。
「オキシトシンホルモンに意思がある
ならば、それは私たちに、わが子を無
事に育て上げさせようとすることです
。陣痛を起こしてわが子をこの世に送
り出し、お乳を出させる。父、母が子
どもをちゃんと育てる上げるように、
わが子への深い愛情を持たせる。さら
に、父母の絆を深めることで、協力し
て育児をおこなっていくようにさせて
いるのです。だって、夫婦の仲が良く
なかったら、子どもがちゃんと育たな
いでしょう。私は、オキシトシンは、
”愛情ホルモン”というよりも”子育て
ホルモン”だと考えています」
NHKスペシャル取材班
『ママたちが非常事態!?』(2016)p.218-9

『リア充爆発しろ』(2009)

マイケル・キンメル『ジェンダー平等が誰に
とっても良い理由』(2015)

※このページは、田中俊之『男が働かない、いいじゃないか!』(2016)を参考にしました。

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