歌謡曲における女性差別
このページでは、歌謡曲における女性差別を
集めました。例えば、恋の歌に「家事」が
歌われたケース等です。(On this page, I
collected discrimination against women
in popular songs. For example, there
is a case where "housework" is sung
in a love song.)
作詞: なかにし礼『恋の奴隷』(1969)
「あなたと逢ったその日から
恋の奴隷になりました
あなたの膝にからみつく
小犬のように
だからいつもそばにおいてね
邪魔しないから
悪い時はどうぞぶってね
あなた好みのあなた好みの
女になりたい」
「奥村チヨの20年後の告白」
20年後、この歌を歌った奥村チヨがNHKスタジオパークで告白した。「私はこんな歌を歌うタイプの人間ではなく、この歌がイヤだった。しかしプロダクションの要請でやむをえず歌った。私は『終着駅』という歌を歌いたかった。会社にその旨申し出ると『この歌はまだはやい』といわれた。それならやめると言った時、『終着駅』を歌わせてもらった。ベタベタするのは嫌いで、私は私というタイプなのです。」
行動する会記録集編集委員会『行動する女たちが拓いた道』(1999)p.32-3
作詞: 山上路夫『世界は二人のために』(1967)
第18回NHK紅白歌合戦出場
「あなたと二人」
「二人のため 世界はあるの」
作詞: 北山修『花嫁』(1971)
第22回NHK紅白歌合戦出場
「命かけて燃えた
恋が結ばれる」
作詞: 山上路夫『瀬戸の花嫁』(1972)
「男だったら 泣いたりせずに
父さん母さん 大事にしてね」
作詞: 千家和也『青い果実』(1973)
「あなたが望むなら
私何をされてもいいわ」
作詞: 千家和也『禁じられた遊び』(1973)
「惜しくない 惜しくない
あなたが望めば 何でも捨てる」
作詞: 千家和也『あなたにあげる』(1974)
第26回NHK紅白歌合戦出場
「可愛いだけの 恋なんて
あなたにあげる 私をあげる
あゝあなたの 私になりたいの」
どうして女だけがあげるなのでしょうか。
作詞: 橋本淳『わたし女ですもの』(1974)
第26回NHK紅白歌合戦出場
「愛を求めてすがり生きる
わたし女ですもの」
作詞: 千家和也『女の純情』(1974)
第26回NHK紅白歌合戦出場
「お側にいるのが 迷惑ならば
何処か陰にかくれて あなたを見てるわ」
男性作詞家たちは、女が耐えて泣いてすがって生きて捨てられて旅に出る。そんな女性がお好みのようです。
(行動する女たちの会資料集成 第5巻 p.63)
作詞: 千家和也『ときめき』(1974)
「女の子にしたら最初で最後なの
大事にしてね、大事にしてね」
耳ざわりよく、詩的に歌われている故に、多く
の少女たちは、知らず知らずのうちに、体制の
網の目にからめとられてしまうということだ。
(酒井ゆか子 「女」No.2 p.196)
作詞: 枯野迅一郎『夢を抱く女』(1974)
「女ごころの 願いはひとつ
妻と呼ばれて つくしてみたい」
作詞: 吉田拓郎「我が良き友」(1975)
「女郎屋通いを自慢する」
作詞: なかにし礼『心のこり』(1975)
第26回NHK紅白歌合戦出場
「私バカよね おバカさんよね
うしろ指 うしろ指 さされても
あなた一人に命をかけて」
作詞: 阿久悠『北の宿から』(1975)
第26,27回NHK紅白歌合戦出場
「着てはもらえぬ セーターを
寒さこらえて 編んでます
女ごころの 未練でしょう」
作詞: 阿久悠『ロマンス』(1975)
第26回NHK紅白歌合戦出場
「生まれて始めて 愛されて
私はきれいに なって行く」
愛されてきれいになるというのは、パターン化されていますね。
(行動する女たちの会資料集成 第5巻 p.63)
作詞: 関沢新一『大勝負』(1970)
第21,26回NHK紅白歌合戦出場
「一つ男は 勝たねばならぬ
二つ男は 惚れなきゃならぬ
三つ男は 泣いてはならぬ」
男の自由を束縛しています。男性ももっと
本音で生きていってもらいたいものです。
作詞: なかにし礼『波止場女のブルース』(1970)
「あなたの生命の 半分に
なってはなさず どこまでも
女ひとりが どうして生きる
情けあるなら 捨てないで」
作詞: 悠木圭子『貴方につくします』(1975)
「過去の私を 流したい
あげるものなど 何も無いけれど
こんな私でよかったら
あああなた
あなたひとすじ尽くします」
作詞: なかにし礼『知りすぎたのね』(1968)
「嫌われたくなくて 嫌われたくなくて
みんなあなたに あげたバカな私」
作詞: 千家和也『なみだの操』(1970)
「あなたのために 守り通した女の操
今さら人に 捧げられないわ
あなたの決して お邪魔はしないから
おそばに置いて ほしいのよ
お別れするより 死にたいわ
女だから」
ひらけ!ポンキッキ『パタパタママ』(1976)
フジテレビにて、担当者に対し、抗議と要望を申し入れた。「望んでも出口のない主婦の日常をチャカすとは主婦の痛みを知らなさすぎる」(中略)パタパタママはその後放映されていないようだが、この番組は76年度テレビ大賞、優秀番組賞を受賞したんだそうな。
(行動する女たちの会資料集成 第5巻 p.148)
作詩: なかにし礼『時には娼婦のように』(1978)
作詩: さだまさし『関白宣言』(1979)
「関白宣言」はようするに、戦前の民法に規定されていたのとちっとも変わらない旧態依然たる夫に対する妻の義務をうたっているのだ。にもかかわらず、やさしげなフォーク調のメロディと時に挿入されるユーモラスな脱線とはその歌詞が意味するところの重大さと毒気とを大きく緩和し、その結果として女をして反逆ののろしをあげさせるよりも、むしろ「男なんて単純でかわいいものネ」という一種容認としてあわれみの気持をおこさせてしまうことにまんまと成功しているのである。男の命令口調の裏側にすかしてみえる未自立の個と甘え。そして不条理とは知りつつ、こうした男の幼稚な自我安定願望をこの上なくいとしくいじらしいと感じ、そのまま抱きとってしまう女。
(田中 婦人問題懇話会会報 No.31 p.58)
『野獣の美学』(1986)(「トラ! トラ!
トラ!」に併録)
「欲しけりゃ奪うぜ野獣の美学
口じゃつべこべすねても
心はうらはら待っている」
芳賀ゆい『星空のパスポート』(1990)
<恋の歌に家事が歌われるケース(A case
where housework is sung in a love song)>
作詞: 窪田聡『かあさんの歌』(1956)を起源とする?
「かあさんが
夜なべをして
手ぶくろあんでくれた
木枯らし吹いちゃ
冷たかろうて
せっせとあんだだよ」
作詞: 小坂明子『あなた』(1973)
第25回NHK紅白歌合戦出場
「もしも私が家を建てたなら」
「家の外では坊やが遊び
坊やの横にはあなた」
そして私はレースを編むのよ」
『世界は二人のために』にしても、『花嫁』にしても、結婚をロマン的に、詩的に歌ったものはヒットするようだ。(酒井ゆか子 「女」No.2 p.196)
作詞: 山口洋子『うそ』(1974)
「あー 半年あまりの 恋なのに
あー エプロン姿が よく似合う」
作詞: なかにし礼『うすなさけ』(1974)
「新しいパジャマを
買いました あなたのために
それほどに バカな私
あなたを 信じてた」
2番
「あみかけのセーター
今すぐにほどけというの」
3番
「バーボンが好きだと
言ったから 買って来ました」
作詞: 有馬三馬子『積木の部屋』(1974)
「いつの間にか君と
暮らしはじめていた
西日だけが入る
せまい部屋で二人
君に出来ることは
ボタン付けとそうじ
だけど充ち足りていた」
作詞: 池田充男『花水仙』(1976)
「新妻みたいに エプロンかけて
あなたを世話した 愛の明け暮れ」
<女性解放シンガーによる歌謡曲>
作詞: 小林万里子『れ・い・ぷ フィーリング
(R.A.P.E Feeling)』(1979)は
放送禁止になった
「男はみんな れいぷフィーリング
男はいつも れいぷフィーリング
あの手この手のれいぷフィーリング
男はいたくもかゆくもないよ
女はいたいよかゆいよ
ノーモア れいぷ
ノーモア れいぷ」
作詞: 湯川れい子『恋におちて
-Fall in love-』(1985)
最近小林明子の「恋に落ちて」に衝撃受けてる。改めて聴くと家父長制下の女性の抑圧がまざまざ歌われてて辛すぎる。色んなこと思い出されるー笑。ポップスや演歌って家父長制と切り離せない。どう聴くか歌うか(カラオケ)問われる〜
— おきく (@okiku3rd) July 4, 2023
<すがる女>
作詞: 石本美由紀『渡り鳥いつ帰る』(1955)
「別れちゃならぬと すがりつく
私のこの手 この心
あっさり振り捨て 別れゆく」
作詞: 中山貴美『年上の女』(1968)
「だめよ だめ だめ つらいのと
泣いてすがった 年上の女」
作詞: 市場馨『みちのくひとり旅』(1980)
「ここでいっしょに 死ねたらいいと
すがる涙の いじらしさ」
作詞: 松井由利夫『未練の波止場』(1957)
「もしも私が 重荷になったらいいの
捨てても恨みはしない」
<男によって生かされる女>
作詞: 川内康範『誰よりも君を愛す』(1959)
「あなたがなければ
生きてはいけない
あなたがあるから
明日も生きられる」
作詞: 水木かおる『アカシアの雨がやむとき』(1960)
「冷たくなった私を見つけて
あのひとは
涙を流して くれるでしょうか」
<男によって変えられる女>
作詞: 川内康範『恍惚のブルース』(1966)
「女の命は 恋だから」
「あたしをこんなに したあなた」
<ノーと言えない女>
作詞: 安井かずみ『経験』(1970)
「やめて 愛してないなら
(中略)
わかってても あなたに逢うと
いやと言えない ダメなあたしネ」
「わかってても あなたの後を
ついてゆきたい ダメなあたしネ」
作詞: 阿久悠『北の宿から』(1974)
「着てはもらえぬセーターを」
「あなた死んでもいいですか」
作詞: 千家和也『ひと夏の経験』(1974)
「あなたに女の子の一番
大切なものをあげるわ」
<待つ女>
作詞: 渡辺真知子『迷い道』(1977)
「現在・過去・未来 あの人に逢ったなら
わたしはいつまでも待ってると誰か伝えて」
作詞: 阿木燿子『プレイバックPart2』(1978)
「気分次第で抱くだけ抱いて
女はいつも待ってるなんて」
作詞: 岡村孝子『待つわ』(1982)
「私待つわ いつまでも待つわ」
作詞: 山上路夫、平尾昌晃『瀬戸の花嫁』(1972)
「瀬戸は日暮れて 夕波小波
あなたの島へ お嫁にゆくの」
作詞: 北山修、端田宣彦、坂庭省悟『花嫁』
(1971)
「花嫁は
夜汽車にのって」
「帰れない
何があっても」
作詞: 阿久悠『嫁に来ないか』(1976)
「しあわせという奴を探してあげるから
嫁に嫁に来ないか
からだからだひとつで」
<外側の女(不倫)>
作詞: 荒木とよひさ、三木たかし『愛人』
(1985)
「たとえ一緒に街を 歩けなくても」
「わたしは待つ身の 女でいいの」
作詞: 山上路夫『空港』(1974)
「どうぞ帰って あの人のもとへ」
「いつも静かに あなたの帰りを
待ってるやさしい人がいるのよ」
作詞: 阿久悠『五番街のマリーへ』(1973)
「悲しい思いをさせた それだけが気がかり」
作詞: 桑田佳祐『いとしのエリー』(1979)
「俺にしてみりゃ これで最後のLady」
<母、あるいは母的女>
作詞: 山川啓介『聖女たちのララバイ』(1982)
「さあ 眠りなさい
疲れきった 体を投げだして」
<歌の中の女は長い髪であらねばならぬ>
作詞: 橋本淳『亜麻色の髪の乙女』(1968)
「亜麻色の長い髪」
作詞: 千家和也『あなたにあげる』(1974)
「長い黒髪 とかれて散って」
作詞: 星野哲郎『アンコ椿は恋の花』(1964)
「長い黒髪 プッツリ切って」
作詞: 岩谷時子、弾厚作『君といつまでも』
(1965)
「君はそよ風に 髪を梳かせて」
<歌の中の女はやつれていなければならぬ>
作詞: 藤田まさと『ある女の詩』(1972)
「グラスを置いて 手をとって
痩せた手だネと 泣いた人」
作詞: 水木かおる、遠藤実『くちなしの花』
(1973)
「いまでは指輪も まわるほど
やせてやつれた おまえのうわさ」
作詞: 岡山準三&BORO『大阪で生まれた女』
(1979)
「やせたなと思ったら泣けてきた」
<歌の中の女は雨に濡れなければならない>
作詞: 千家和也『雨』(1972)
「雨に濡れながら 立たずむ女(ひと)がいる」
作詞: 富樫政子『雨の銀座』(1967)
「一人涙に 濡れながら
うそと知りつつ 待ちました」
作詞: 阿久悠『雨の慕情』(1980)
「雨々ふれふれ もっとふれ
私のいい人つれて来い」
※このページは、犬養智子『愚かな女だから愚かに生きるのですか』(1980)、井出祥子、東京女性財団『「ことば」に見る女性』(1998)p.120-135、
『行動する女たちの会 資料集成 第5巻』(2015)p.509
三井マリ子、中嶋里美、坂本ななえ『女たちは地球人』(1986)p.72-4を参考にしました。