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「スカートを履きたがる」男の子の相談への援助事例

この文章は雑誌『げ・ん・き(162号)』2017.7 p.114-119
「子育て、育て直し」の視点から(第13回)
所収の角田春高氏の論文です。

あなたは、スカートをはきたがる男の子を見たことがありますか。
僕はありません。しかし、実際に調べてみると、います。
この論文で紹介します。

 今号では、児童館に勤務する保育者から、ある親子の相談事例についての援助経過を紹介します。保育者から「男子を育てる母親からある相談を受けたが、どのように相談に乗ったら良いか見当がつかない」とのことで、援助の依頼がありました。相談の内容を聞いてみると「男の子がスカートを履きたがることについて母親が悩んでいる」ということでした。近く、保育者と親子が面談するとのことで助言しました。

<相談内容>
 家族は、A君(2歳半)と両親、姉の4人家族。
 A君は、スカートを履きたがる。その姿を見た人たちが「女の子みたいで、かわいい」と言うのを喜び、ズボンを履くことを勧めても履こうとしない。やっと履いてもすぐに脱いでしまう。
 父親は、母親に対して「あまりうるさく言わないほうがいい。そのうちにズボンを履くようになるだろう。無理に怒っても仕方がない」と言う。
 相談日には、本人(A君)を連れて行くが、多分スカートを履いていると思うので、「かわいい」など言わないで欲しいとのこと。
 母親は、男子なので男の子らしい服装や振る舞いをして欲しいとのこと。このままでは、将来「性同一性障害」になるのではないかと心配になる。どうしたらズボンを履くか教えてほしい、とのことでした。
p.114

スカートを履くいきさつは、母親によると「かわいい」「ピンク」が好きな子だったとのこと。姉のようになりたいのかなと聞くが、母親は「違う。ただかわいいと言われるのが好き」。弟が生まれてべったりの時から、「ピンクが好き」ということがわかったとのこと。
p.115

次に、3週間後の来所時の様子です。

 最近の様子を聞くと、母親は相談の様子を父親に話をしていましたが、父親が遊ぶときくすぐりをするようになりました。1週間位してからは、くすぐりに対して怒ったようにくすぐり返しをしました。その後数日すると、くすぐりに対して、「へっへー。へっへー」と声を出しました。数日前からは、父親のくすぐりに対して、A君は声を出して喜ぶようになりました。するとその頃からピンクを選ばなくなり、ズボンを履くようになりました。スカートを出して見ますが、ズボンを選んで履くようになっていますとのこと。その後、保育者の話によると、あれほど足繁く顔を出していた親子が、3週間近く顔を出さなくなったとのこと。母親にとっては問題解決したから顔を見せなかったと思われますとのこと。
p.118